昨夜から降り続けている雪はもうすでに、

10センチに満たないぐらいの量まで積もっていた。

銀色の世界はとても美しくて、儚くて、隣を歩く

彼の横顔を連想させた。







「木野さん。」

「わっ」

いつのまにか吹雪君は立ち止まっていて、私の顔を覗き込む

ようにして見ていた。

「大丈夫?さっきからボーっとしてたみたいだから。」

「へっ?あ、うん。平気よ。」

その曖昧な返事がおかしいと笑われた。

気がつくと牡丹雪が粉雪に変わっていた。

はぁ、と手に息を吹きかける。手袋ごしでも外気の寒さが

ぐらいに伝わってくる。

「吹雪君は・・・。」

「うん?」

「雪に似てる・・・。」

「へぇ・・・。どうしてそう思うの?」

「優しくて綺麗なんだけど儚くて、目を離した隙にどこかへ消えてしまいそう。」

「それは単に僕が北海道出身とかではなくて?」

「うん。」

「だけどそれならばむしろ木野さんに当てはまるんじゃないのかな・・・。」

「えっ?・・・っわ!」

瞬間、足を滑らせて転びそうになった。

だけどそれは吹雪君によって阻止された。

「気を付けて歩かないと。」

「う、うん。ありがとう。」

抱きすくめられるような形になってなんだか気恥ずかしい。

彼はそっと体を離すと手を差し出した。

「危ないから手、つなごうか。」

「うん。」

つながれた手からは、吹雪君の暖かい体温が伝わってくる。

少し、吹雪いてきたかな・・・。

『それでお互い、消えることはないね。』

そう心の中で呟いたら、うんって聞こえた気がした。





雪のような存在









雪ネタです。自分にしてはめずらしくシリアス過ぎましたね。
今、私のところでは雪が降っていて少し積もっていたので、
切ない系で書いてみました。






戻る