「あれ、立向居君?」
20分ほど前に練習は終わったはずなのだが、グラウンドの片隅、ゴールの
前に一人だけ立向居がいた。
「熱心ね。まだ自主練してるの?」
春奈は思わず声をかけた。
「!・・・音無か・・・。」
「なぁに、私じゃ嫌だった?」
「い、いや、そんな訳じゃ・・・。」
「ふふ、冗談だよ。もう終わらないの?みんな中に入っちゃったよ?」
「あ、うん、じゃあそろそろ・・・。」
立向居は地面に転がっているボールを拾い始める。
「私も手伝うわ。」
「あ、ありがとう。」
そのまましばらく沈黙が続いた。
「・・・俺。」
「うん?」
最初に沈黙を破ったのは立向居だった。
「やっぱり・・・足手まとい、だよな・・・。」
「っな!!」
「円堂さんに近づけるように、みんなと一緒に歩んでいけるように精一杯がんばってきた。
だけど、やっぱり俺に円堂さん達と戦える力なんて・・・」
「ある!!」
「!!」
立向居は驚いて春奈の方を向いた。
春奈は本気で怒っているようで、顔が真っ赤だった。
「またそんな弱音を吐いて!!立向居君は今だってあんなに一生懸命練習してたじゃない!
それに立向居君にキャプテンは関係ないじゃない!!立向居君は立向居君なんだから!」
一気に喋ったのか、喋り終わった後にぜぇぜぇと息を出す。
一方の立向居は突然のことで呆然としていた。
「と、とにかく。立向居君がとれだけ努力してきたのか、それは私もよく知ってるよ。
だから、もっと自信持って!立向居君だってキャプテン達に負けないくらい、すごいもん!」
急に怒鳴ったことが恥ずかしくなったのか、後ろを向いてそう言った。
その様子を見た立向居はふっと笑みをこぼした。
「・・・ありがとう、音無。考えてみれば、前にもこうやって俺を励ましてくれたよな・・・。」
「・・・立向居君って、すぐに弱気になるんだもの。」
「俺、もっとがんばるよ!それでいつか、円堂さんにも負けないようなGKに
なってみせるよ、絶対に!」
春奈はぱっと表情を輝かせる。
「そう!その意気よ、立向居君!あなたなら絶対なれるわ!」
そこで二人は顔を見合わせると、にっと笑いあった。
ふっと、春奈が立向居の顔を見た。くすり、と笑う。
「立向居君。」
「ん?・・・!!」
ばさり、と立向居に向かってなにかを投げる。
ふわり、とそれを掴むと、それは真っ白なタオルだった。夕日に溶け込んで、オレンジ色に
染まりかけていた。
「顔、すごい泥だらけよ。それでふいて!」
「はは、本当?ありがとう。」
春奈はそのままタタッとかけだした。そしてすぐにピタッと立ち止まると、立向居の方へ
振り向いた。
「私、ずっと立向居君のこと、応援してるからね!」
そう言ってにこりと笑うと、また走って行ってしまった。
その時立向居は、今、自分顔が熱くなるのを感じていたが、それは夕日があまりにまぶしすぎる
からと心の中で言い訳をしていた。
夕日の熱さ
立向居くんを見ると世話を焼きたくなる自分がいて、
音無を見るとつい甘えてしまう自分がいて、
それは恋をしているからだということに気づいてしまった。
はい、初春奈受けです。
木春も可愛いと思うけど、立春もすごく好きなので、挑戦してみました。
私は秋ちゃん受けが主だけれども、こうやって春奈ちゃん受けのものも
書いてみるのも、なんか自然でいいな〜、と思います。
相変わらず下手くそな文ですが、個人的にこの話は気に入っています←
よかったら感想くれるとうれしいです。
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